製造のDX (デジタルトランスフォーメーション)は、より高いレベルの自動化やIIoTによる物理世界とデジタル世界の統合によるスマート製造を可能にし、変化するビジネス環境への適応を促進します。多くの製造業は、国内外で複数の工場を運営しており、それぞれの工場は異なる製造ラインや設備、さまざまなサプライヤ、そして異なる文化をもつ従業員を抱えています。したがって、製造のDXは、複雑なネットワーク全体にソリューションを展開し、工場の違いに対応するために必要に応じた変更が必要となります。
変化するビジネス環境への適応を促進するためには、IT (情報技術)とOT (制御技術)の融合がますます重要になり、そのために利用できる技術として、クラウドコンピューティングとエッジコンピューティングが注目されています。ここでは、クラウドコンピューティングとエッジコンピューティングに関して、CIOやIT/OT管理者が考慮しなければならない点を掘り下げて説明いたします。
クラウドコンピューティング
クラウドコンピューティングは、オンプレミスのモデルから発展したものです。クラウドコンピューティングでは、工場、設備、機械、コントローラなどから大量の産業用データを、インターネット接続を介してIT/OTアプリケーションに転送します。クラウドサービスは必要に応じて拡張でき、コスト効率、シンプルさなど多くの利点を提供します。ソフトウェアやバックエンドのインフラを管理する責任はクラウド・サービス・プロバイダにあるため、人材やインフラへの投資を節約することができます。
クラウドサービスの問題点としてインターネットに常時接続する必要があり、ネットワーク接続がないまたは時々しか接続しないという環境での利用には不向きであることが挙げられます。また、クラウドコンピューティングは、計算と保存が行われるサーバに大量のデータを送信する必要があるため、帯域幅を消費します。このため、産業界のように膨大な情報が発生する環境では、通信コストが高くなる可能性があります。また、ネットワーク遅延により、アプリケーションの応答時間が長くなってしまうこともあり、リアルタイムに近い応答時間が必要なケースで問題となる可能性があります。そのため、クラウドコンピューティングは、製造のDXに対する唯一の答えにはなりません。
エッジコンピューティング
エッジコンピューティングは、何kmも離れたクラウド・データ・センターではなく、デバイスに近い、ネットワークの「エッジ」にコンピューティングリソースを配置します。エッジコンピューティングは遅延の短縮を重視し、データの送信元近くでより多くの処理を行なうので、応答時間が重要なアプリケーションで有効です。データ生成元に近いところで演算することで、リアルタイムのパフォーマンスを実現します。また、より多くのデータをローカルで処理し、クラウドに送信するデータの量と頻度を減らすことで、ネットワークの過負荷を防ぎます。データをローカルで管理することは、セキュリティや情報ガバナンスにも役立ちます。
IDCの調査によると、ITおよびビジネス部門の上級意思決定者の73%がエッジを戦略的な投資と見なし[1]、生産性向上、セキュリティ改善、より迅速で十分な情報に基づいた意思決定につながる方法として、エッジに注目しています。IDCはまた、2023年までに、新しい企業ITインフラの50%以上がエッジに展開されると予測しています。また2024年までに、エッジにおけるアプリケーションの数は800%増加すると予想しています[2]。
[1] 「Edge Computing Solutions Powering the Fourth Industrial Revolution」 Lumen社とIntel社がスポンサーとなり、IDCが世界の802人のビジネス意思決定者を調査
[2] 「The Impact of the Edge on the Future of Enterprises」 Akamai Technologies社がスポンサーとなり、IDCが調査
まとめ
エッジコンピューティングとクラウドコンピューティングは、解決するニーズが異なるだけで、競合する技術ではありません。データやアプリケーションをどこに展開するかを先に考えるのではなく、根本的なビジネスニーズに焦点を当て、コスト、セキュリティ、遅延の許容度、インターネット接続に関する要件を考慮して、エッジまたはクラウドを選択します。クラウドコンピューティングは、オンデマンドでスケーラブルなアプリケーションに適しており、増設や縮小が必要な場合に効果的です。エッジコンピューティングは、大量のデータを生成し、リアルタイムの応答が必要なアプリケーションに適しています。
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