現在、大規模な組織が直面している最大の課題の1つは、プロセス、方法、ツール、データ、スキルなどのシステムを統一して、運用管理に一貫性を持たせ、コラボレーションを促進することです。デジタルトランスフォーメーションにより、遠隔地での仕事が容易になり、国境の問題が完全に取り除かれた今、オペレーションが世界中で均質に適用されることがこれまで以上に重要となっています。
これは、国によって規制が異なることが多く、製品の複雑さも大きく異なる医療分野など、特にデリケートな業界では重要なことです。透析と腎臓ケアを専門とするフレゼニウス･メディカルケア社などのヘルスケア企業の場合、この複雑さのレベルは、携帯用透析器の提供から、非常に複雑で高性能な透析装置の構築まで、多岐にわたっています。
製品バリューチェーン(研究開発、製造、サービス)を中心に、企業が提供できる製品やサービスの質を高めることを目的としたグローバルオペレーションの統一は、事業ライン、生産施設、さらには地域を越えてシステムやプロセスをシームレスに接続できることに依存しています。デジタルスレッド、デジタルツイン、製品ライフサイクル管理などの機能を使用して、プロセスを合理化し、システムを統合し、ますます断片化するデジタル環境においてより効率的に運用することがますます増えてきています。
フレゼニウス･メディカルケア社のような企業では、システムを統一することで、製品開発のすべての段階において技術的･人的プロセスを調和させ、グローバルにスケールアップする機会が生まれます。シームレスな統合を実現するためには、まず、一貫した包括的な組織改革を可能にする強固な基盤を確立し、継続的な製品開発とイノベーションが行なわれるための環境を整えることが重要です。
デジタル化のあらゆる形態と同様に、変革プロセスの最初のステップは、新しいテクノロジと働き方を受け入れる企業マインドと文化を創造することです。フレゼニウス･メディカルケア社、そして広く医療業界では、歴史的に地域的な考え方で運営されるのが一般的でした。つまり、北米の製品は北米で生産･販売され、EMEA (ヨーロッパ、中東、アフリカ)の製品はEMEAで生産･販売されていたのです。このため、地域ごとに市場が形成され、互いに閉ざされていたのです。
特に、お客様が場所を問わず、ニーズに合った製品を利用できることを望むようになっているため、より大きなスケールでサポートや製品を提供するためには、これらの地域市場をつなぐことが重要です。このような背景から、従来はバラバラだったシステムを統一することで、地域密着型企業からグローバル企業への転換を図ることができるのです。
このアプローチを採用することで、グローバルな製品をどこででも設計し、どこででも製造し、どこにでも出荷することができます。医療分野では、一貫したサービスと治療を提供することで、患者さんの生活をより快適にすることができます。また、このような変革を促すことで、将来の製品開発をよりスムーズに行なうことができます。さまざまな市場からのデータ解析のプールを広く持つことで、継続的な製品改良のための設計プロセスに情報を提供することができるのです。
多くのグローバルサイトが1つのシステムに統合されると、統合する必要のあるさまざまなデータセットが存在することになります。そのためには、すべてのユーザが利用するデータのための信頼できる唯一の情報源(SSOT: Single Source of Truth)を作成することが重要になります。そうすることで、業務のあらゆるレベルでコラボレーションが容易になり、組織全体の開発プロセスが加速され、将来の進歩につながる基礎的な能力が一から構築されます。
デジタルオペレーションを採用する場合、デジタル署名を可能にするといった単純なことでさえ、処理能力を大幅に合理化し、効率性を高めることができます。フレゼニウス･メディカルケア社では、これまで30日かかっていた承認サイクルが、わずか1.5日に短縮されました。
また、統一されたシステムへ移行することで、より大きなコラボレーションが可能になります。複数の拠点で同時に情報やデータを更新することで、より効果的な作業が可能になります。また、エンド･ツー･エンドのトレーサビリティにより、製品のリスクアセスメントを従来よりも迅速かつ効果的に行なえるようになります。
また、データ運用をシームレスなエコシステムに再構築することで、既存のコンプライアンス対策に影響を与えることなく、データ運用を行なうことができます。すべての関連情報を一箇所に集めることで、製品にとって重要な規制情報の管理が、プロセスの最後に別々の場所で個別に変更する必要がなく、最初からプロセスに統合されます。
基礎的な作業が完了したら、企業はより高度なデジタル機能を取り入れて成功への確信を得て、成功の積み重ねを見ることができます。
システム間の統合が進めば、より効果的で正確なシミュレーションが可能になり、新製品のプロトタイプを効率的に作成し、市場投入までの時間を大幅に短縮することができるようになります。
リモートモニタ機能、設置ベースの可視化、製品および治療システムからの現場データの研究開発へのフィードバックループを確立することにより、製品、性能、品質のさらなる向上が可能となり、腎治療の実際の医療成果を向上させることができるのです。統一されたシステムの中で段階的な変化を続けることで、現代の課題に効果的に取り組むことができ、組織は拡張可能な方法で継続的な成熟度を築くことができるようになるのです。
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公開 2022年1月26日
