自動化から自律へ

自動化から自律への変革

自律的な生産という数年来のビジョンを実現するために、今日のタイヤ会社は、その野望を支える基礎的な部分に焦点を当てる必要があります。これには、自動化された機械プロセスとクリーンデータの採用が含まれ、これらを組み合わせることで、工場フロアでの迅速かつ正確な意思決定が可能になります。

カリプソ社で実施した研究の一環として、ガートナー社のサプライチェーン戦略のハイプサイクルのモデルをタイヤ部門に適用してみました。ガートナー社は、この10年間で、現在の多くの製造工場における現状である手作業の段階から、2030年代までに自動化、拡張、そして自動化という3つの発展段階へと大きく変化すると予測しています。これらの段階は、それぞれ自律型工場につながる新しい機能を実現するために、次々と技術を導入していきます。最終目標は、AIで運営される自己管理された設備のネットワークとなります。

タイヤ会社の経営幹部にとって、現在の焦点は、クラウドコンピューティングを採用し、PLMやERPなど、これまで断絶していたシステムをデジタルスレッドの一部として統合することにあります。このデジタル化された基盤の上に、タイヤメーカは、ロボティック･プロセス･オートメーション(RPA)、モノのインターネット(IoT)、機械学習(ML)、デジタルツインの開発を統合して、タイヤ製造バリューチェーンを変革するためのより良い位置につくことになります。

この変革に伴うプロセスの強化は以下の通りです。

• ML制御によるプロセスの最適化 – データモデリングと分析を使用して、材料入力、制御システム、ランタイムパラメータ、タイミングを改善します。
• 予知保全と状態モニタ – IoTを使用して、是正措置や予防措置を可能にするフィードバックループを実装します。
• エネルギー管理 – 機械の稼働とスケジューリングの最適化、および統合された生産スケジュール計画により、エネルギー効率の向上をサポートします。
• スマート生産のスケジューリング – スマートマニュファクチャリング機能を使用して、作業員、材料、工具、在庫レベル、生産率のスケジューリングと割当ての改善を可能にします。

これらの開発により、工場全体のITとOTの統合が進み、マシンデータの品質と有用性が向上し、スマートで自律的な企業が実現します。

タイヤの自律的生産がもたらす利点

このようなデジタル導入のプロセスは、経営者にとって魅力的なものです。タイヤの分野では、現在直面している多くの課題や圧力に対応すると同時に、将来のビジネス価値と市場での地位をより強固に守ることができます。デジタル化によってもたらされる多くの利点の中で、経営者はコネクテッドプラントの運用がもたらすものを期待することができます。

• 製品の品質向上
  ロボットやセンサ技術の進歩により、より正確で一貫性のある生産が可能になりました。その結果、製品間のばらつきが少なくなり、予測可能性が向上し、廃棄物のリスクも低減します。
• 生産スループットの向上
  機械効率と稼働時間の向上により、品質を犠牲にすることなく、より多くのユニットを一定時間内に生産することが可能です。
• 機器の稼働時間の向上
  機械の信頼性を高めることで、ダウンタイムを減らし、予知保全を導入して将来のリスクを抑制することができます。
• 生産コストの削減
  標準化を進めることで、より効率的に原材料を使用することができます。
• エネルギー使用量の削減
  分析機能によりエネルギー使用量を可視化し、無駄を省き、リソースをより適切に配分することができます。
• イノベーションの向上
  デジタルツインなどのソフトウェアの開発により、より正確な意思決定が可能になり、研究開発から生産まで一貫して行なうことで、製造メーカが既存のプロセスを中断することなく実験やテストを行なう能力を高めることができます。
• 市場投入までの時間を短縮
  エンド･ツー･エンドでの生産が可能になり、生産量とリードタイムの予測可能性が高まります。

経営陣がこれらのメリットから得られる反復的かつ継続的な進歩は、長期的な改善をもたらすだけでなく、短期的にも収益に影響を及ぼします。

この分野の経営者と協力して、デジタル製造技術への投資により、総合設備効率(OEE)が20%向上し、EBITDA (Earnings Before Interest Taxes Depreciation and Amortization: 利払い前･税引き前･減価償却前利益)が2～5倍改善した企業を既に見てきました。不透明なマクロ経済環境がさらに進行する中、コスト改善は非常に魅力的なものとなっています。

自律化への道を歩み始める

今後数年間に起こるであろう変化に対応するためには、経営者がデジタル化の取り組みを軌道に乗せ、できるだけ早く価値を生み出すことが重要です。そのためには、すでに自動化されており、自律化に適した生産分野に注力することをお奨めします。

そのためには、事前に計画を立て、明確に定義されたビジネスケースを考慮した「MVP to scale」アプローチで、イノベーションの実現をマッピングすることが必要です(MVP (Minimum Valuable Product： 実証可能な最小限のプロダクト)で、事業価値の検証活動です)。例えば、カリプソ社では、このようなアプローチでお客様をお迎えしています。

1. スマートマニュファクチャリングの実現をマップする。変革のプロセスを、進捗状況を示すマイルストーンとともに、数年にわたる旅として取り組みます。
2. スマートMVPプログラムを起動する。データモデル、基本ユースケース、サイトアーキテクチャ、測定、ステークホルダーエンゲージメントによってサポートされる、将来のプラント運用のためのビジョンを洗練させます。
3. デジタル機能を開発する。明確化されたビジネスニーズと望ましい結果に適合する技術を導入します。
4. スマート工場の規模を用途に応じて拡大縮小する。強力な価値仮説に基づき、ユースケースを水平方向に拡大縮小します。
5. デジタル･オペレーション･エコシステムに統合する。コネクテッドエンタープライズ戦略による広範なビジネス変革を可能にします。

このアプローチでは、関係者(ステークホルダー)の参加や変更管理などの問題に並行して取り組み、ビジネスをスピードアップさせることができるため、経済的に実現可能な方法で、より低いリスクでスケーリングすることができます。初期の段階で価値を示すことで、組織全体の賛同を得やすくなり、完全な自律性というビジョンに向かって前進することができます。

タイヤ生産の最適化を支えるデジタル技術については、こちらで詳しくご紹介しています。